弊時空の闇中+転♀ おぼえがき(大ネタバレと大捏造)
あんまり報われないかんじ。各々なりの救いやゆるしは得ている。
三人とも互いに負い目を感じており、同時に友愛や親愛以上のものを抱いていたが(大人になってから自覚を認めた。もう子供ではないので)、『"三人で"いっしょにいるために』よき隣人、得難き友、そして共犯者で在り続けた。
綻び、歪みにつぎはぎだらけ。はたから見れば不安定でしかない関係性だったが、それでも彼らにとってはただひとつの蜘蛛の糸で、なんぴとたりとも侵せない安らぎだった。
転入生
レイブンクロー。マグル生まれ。
7年生に上がった頃、1年生の後輩であるアルバスをたいそう気に入り、よく連れ回していた。
セバスチャンとオミニスに対して、自分が関わりさえしなければあんなことには、といつまでも拭い去れない罪悪感を抱えている。
卒業後は、ホグズミードに構えた自分の店を拠点としつつ闇祓いとして各地を駆け回りながら、古代魔術の痕跡をたどるためにフィールドワークを続けていた――つまり学生のときとおおよそ同じ生活である。
いつしか古代魔術によるなんらかの影響で外見年齢の成長が止まった。ただし不死ではないのでダメなときはダメ。
自分を知るともがら達が眠りゆくさまを見届けたあと、闇祓いを辞し、かつての後輩であるダンブルドアにちょっかいをかけて胃を荒れさせたり、DADAの教授として着任したり、生徒として紛れ込んだり、『いつか』が来るまで奔放にふるまっているようだ。学生時代は分かりづらかったが、とんでもない大変人。
亡きフィグ、セバスチャン、オミニスら本人たちから託された形見の杖や、アミット教授の自伝、ギャレスの魔法薬レシピなどを命よりも大切にしている。
とくに敬愛している人はへキャット先生とフィグ先生。
「やあアルバス!(気さくな挨拶)」
「(痛むダンブルドアの胃)」
セバスチャン・サロウ
スリザリン。
アンやおじのソロモンの一件以降、卒業までことさらに色彩をなくした顔で生きていた。しかし、自分の犯した罪を見届けてもなおアズカバンには突き出さず、傍らで友人として支えることを選んだ転入生とオミニスの助力もあり、少しずつだが前を向いていけるようになる。
卒業後、DADA教授に就任。プロフェッサー・サロウのちょっぴり刺激的な授業方式は、一秒も退屈しない! と非常に人気を博した(真面目な他の教師陣にはいささか不評だったが)
また、彼の授業では女子生徒が前の席をとろうと躍起になっている姿が毎回見受けられ、彼のいわゆる『匂わせ』で人しれず涙を流した生徒も数知れずいたとか。
アンとは幾度かの対話を経て、完全に元通りとまではいかなかったが、ときどき茶の席を設けられるほどにはなった。
「偉大なるスリザリンの鑑、親愛なる我らがサロウ教授。本日はお日柄もよく」
「おいおい、久しぶりに顔を出したと思ったら、さっそく熱烈だな。いいぜ、5ヶ月、5ヶ月もふくろう便を出しすらしなかったつれなさは許すよ。どうした?」
「うん、ありがとう。申し訳ないけど、これだけ言いに来たんだ――私をダシに使わないでくれる?」
「……やっぱり許すのは無しだ。しかし、なんの話か見えないな……なあオミニス?」
「サロウ教授。悪いが、俺は彼女の側だ。君の手腕なら、もっと上手いやり方があっただろうに」
「なんだ二人して。いやに他人行儀だな」
「……」
「あ〜……わかった、わかったよ。僕が悪かった。君の写真を、生徒の前で思わせぶりに見つめたりした僕が完全に悪い」
「そ、そんなことしてたの!?」
オミニス
スリザリン。
以前は自分たちの秘密の場所に踏み込んだ転入生を疎ましく思っていたが、次第に「なあ、君たち、僕より仲良くなってないか? 別にいいけど、おかしいだろ」とセバスチャンが不機嫌そうにするほど打ち解けた。
よく転入生共に『廊下に落ちている』姿を目撃される。
卒業後は魔法省に所属し、魔法界における闇の魔術や違法魔法薬などの検挙などに尽力した。
ゴーント家とは完全に縁を切ったため、便宜上および転入生のはからいで、転入生のファミリーネームをそのまま名乗っていた。彼らの同窓生たちは「どうしてそうなる」「それはおかしい」「君たちの距離感が怖い」などと口を揃えたという。
「君たち、以前『女子生徒を上手く躱すために転入生をダシに使うな』と僕を非難したことがあっただろ」
「ほうはっへ?」
「転入生、僕のシェパーズ・パイはうまいか?」
「ん!」
「そうか、それはよかった。でも、無理に返事をしようとしなくていいからな。……で、僕は懇切丁寧に謝罪させられたわけだが」
「今さら掘り返してどうした、セバスチャン。……ん、フィリングの味付けを変えたのか? うまい」
「お、よくわかったな。僕も気に入ってて……いや、違う、話を逸らすな。いいか、僕からすれば、君たちのほうがちゃんちゃら変だぜ」
「なにが?」
「魔法界で変じゃないことなんてないだろ」
「そうだけど、そういうことじゃない……! いいか、転入生、誓いも立てていない相手に名前をやるな。オミニス、君もそれをどうしてかんたんに受け入れる。どうだ、僕だけが悪く言われる謂れがまったくない!」
「うーん……まあ……そうかもしれないけど。でも、ねえ?」
「ああ。俺と転入生は、家族のようなものだから。俺は……転入生の名前がほしかった」
「うんうん。そういうこと」
「……ここが家でよかったぜ。談話室だったら、またたく間に話題の的だ。『オミニスが転入生にプロポーズをした』ってな」
「この際だし、セバスチャンも名乗ったら? ミドルネームにしてもいいし」
「………………マイレディ、マイミスター。ご歓談中に恐縮だが、紅茶のおかわりはいかが?」
「いる! ありがとう。ついでに水もお願い!」
「オーケー、レイブンクロー。
――アグアメンティ」
「ああ、俺にも。ありがとう。ちなみに、俺は紅茶の再加熱を支持していないほうだぞ」
「同意見だ。……はあ、やれやれ。従者ってのも大変だな」
ここの闇中と転は誰ともくっつかない
けど闇中→転の執着は本物だし、転→闇中への感情の増幅と時間経過は比例する 時間が癒やさない傷もあるってコト…
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